成果主義人事の基本的な理念は「人を仕事に合わせていく」ということである。
程度の差はあれ、このような理念のもとで企業人事は進められていくであろう。
「人を仕事に合わせていく」という、言わば古典的な人事理念に戻ることは
時代の要請に反することであり、非現実的である。
しかしながら、「仕事(職種・職務)に人を合わせる」とするならば、
マネジメントにはどのような人を合わせるべきかという問題がある。
これは企業が権限と責任の階層連鎖から成り立っている以上、
永遠普遍のテーマである。
マネジメントとは何かということにも関わってくるが、狭義のマネジメントとは
「管理の技能」であり、「目標達成へ向けて、人と組織を統制していくスキル」
であるから、これは明らかに特定のポジションスキルとしての「仕事」である。
であるならば、マネジメント職やリーダー職というポジションスキルをも含めた、
戦略的な能力開発のシステムを構築する必要がある。
そうでもしない限りは、マネジャーやリーダーをどこから持って来て
「仕事に当てはめる」のだろうか。
マネジメント職を技能専門職と見なして、外部から人材派遣してもらうならば、
それはそれとして画期的な試みであろうが。
余談ではあるが、欧米企業では「コンピテンシー」とは、なにも技術専門職務に
限ったものではないし、職務というよりはむしろ職位職階を貫き、職種職掌を横断した
行動価値観や志向性を含んだ概念である。
ある意味ではこれは、これまで日本企業の人事考課システムの評定ステージであった
職能(職務遂行能力)の概念に近いものである。
ともあれ成果主義人事のトレンドは持続的なものであろうし、
専門性を持ったプロフェッショナルな人材、市場価値の高い人材を創出していくのは
時代の必然であろう。
しかしながら、専門性や市場価値の高さを強味とする社員を集めれば、
企業の総合力が高まるというのは妄想に近い。
このことは、いち早く専門性や市場価値を高めるためのキャリア開発研修を
導入した企業を例にとっても明らかである。
よほどの専門特化した技術系企業ならともかく、個人のキャリア開発・専門性の
向上と総合的な組織力とは相反するものである。
特にチーム組織においてはチームパフォーマンスを上げるためには個々人の
プロフェッショナリテイだけでは絶対に限界がある。
チームマネジメントのスキルとリーダーシップのスキルの向上は
永遠普遍のテーマであることは間違いないはずである。
技術者に技術教育をいくら重ねても限界があるわけであるが、
マネジメントには限界がない。
複線人事で専門職として処遇を厚くしたとしても、マネジャーとしての優秀な
資質を持った技術者についてはマネジメントの訓練を早期に行なわなければ
経営的には損失である。
成果主義が真に機能するにはプロフェッショナルなマネジメントスキルを
身につけたリーダーの育成が鍵となろう。
また社員の専門性と市場価値を高めること、エンプロイアビリティ
(就業可能性)を高めるということは必然的に、社員の就業エントロピー
(職業選択の自由度)を高め、組織への帰属意識を希薄にさせるという
経営サイドのリスクがあることは覚悟すべきである。
このようなトレードオフを回避して、個と組織のパワーをバランスさせながら、
経営活動を促進していくために、必要不可欠となるのが
マネジメントの機能ということにもなる。

